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札幌地方裁判所 昭和31年(ヨ)308号 判決 1957年4月19日

申請人 日本コロムビア株式会社 外八名

被申請人 北海道ミユージツク・サプライこと西村一男

主文

本件仮処分申請は却下する。

申請費用は申請人らの負担とする。

事実

申請人代理人は、「一、被申請人は、当庁昭和三二年(ワ)第一〇四号蓄音機レコード使用禁止ならびに損害賠償請求事件の本案判決に至るまで、別紙目録(一)ないし(九)記載の蓄音機レコードを有線放送に使用してはならない。二、被申請人の別紙目録(十)記載の物件に対する占有を解いて申請人の委任する執行吏にその保管を命ずる。執行吏は、被申請人が右物件を別紙目録(一)ないし(九)記載の蓄音機レコードの有線放送に使用しないことを条件に、被申請人にその使用を許さなければならない。三、執行吏は、右命令の趣旨を適当な方法で公示しなければならない。」との判決を求め、次のとおり述べた。

一  申請の理由

(一)  申請人らは、多年蓄音機レコード(以下単にレコードという。)の製造販売を業としているものであるが、

申請人日本コロムビア株式会社は、別紙目録(一)記載のレコードにつき、

同日本ビクター株式会社は、同(二)記載のレコードにつき、同東京芝浦電気株式会社は、同(三)記載のレコードにつき、同日本グラモフオン株式会社は、同(四)記載のレコードにつき、同日本ウエストミンスター株式会社は、同(五)記載のレコードにつき、同日蓄工業株式会社は、同(六)記載のレコードにつき、同テイチク株式会社は、同(七)記載のレコードにつき、同新世界レコード株式会社は、同(八)記載のレコードにつき、同キングレコード株式会社は、同(九)記載のレコードにつき、

それぞれ著作権者の許諾を得て適法に音楽を写調し、各レコードの著作権を取得している。

(二)  被申請人は、昭和三十一年七月頃から、札幌市北一条西三丁目三番地に北海道ミユージツク・サプライと称する店舗を設け、同市内においてとくにレコードを大量に購入使用する喫茶店、酒場、食堂、旅館、浴場、理髪店その他一流商店を対象として加入料二百五十円、装置料三千七百五十円、毎月の基本料金八百円、加算金(百九十円に一日の営業時間数を乗じた額)を徴収することとして加入者を募集し、これに加入した者に対し、毎日午前九時半から午後十二時まで、第一番組(クラシツク音楽)および第二番組(ポピユラー音楽)と銘打ち、申請人らの許諾を得ないで、別紙目録(十)記載の機器を使用して別紙目録(一)ないし(九)記載のレコード(以下本件レコードという)を有線放送している。しかして、右加入者は昭和三十一年八月十七日現在で十四店であつたが、現在では約四十店に上り、なお目下全道に業務を拡張しようとして準備している。

(三)  右有線放送の実施により、札幌市内のレコード販売業者の売上は減少し、これらのレコード製造業者である申請人らは、多大な損害を受けつつあるから、いま直ちに本件レコードの使用を禁止しなければ、回復することのできない損害を受ける虞がある。よつて、申請人らは被申請人に対して蓄音機レコード使用禁止ならびに損害賠償請求の訴訟を提起し、同訴訟は、目下当庁昭和三二年(ワ)第一〇四号事件として係属中であるから、著作権法第三十六条第一項にのつとり、偽作の疑ある被申請人の有線放送を差し止めるため、本申請に及ぶ。

二  被申請人の答弁に対し、次のとおり述べた。

(一)  著作権の侵害について

(1)  有線放送についての許諾権

著作権の本質は、その著作物を複製する権利である。複製とは同一表現形式をとると、あるいは別異の表現形式をとるとを問わず、いやしくも人をして原著作物の再生または表現であることを感知せしめる状態におくことをいうのであるから、他人の著作物を複製するときは、法律に別段の除外規定のない限り、偽作たるを免れない。また、著作権はその利用の面から見ると著作物を公表する権利であり、著作物の公表には展覧の場合を除き、必ずその前提として複製を伴つている。したがつて、いやしくも著作物の公表が複製を伴う限り、それがいかなる方法でなされようとも、また法律の規定の有無にかゝわらず、著作権者は、その公表につき許諾の権利を有する。したがつて、被申請人が申請人らの許諾をうることなく行つている本件レコードの有線放送は、申請人らの有するレコードの公表権を侵害すると同時に、基本的にはその複製権を侵害している。

著作権法第二十二条の五は、著作物を直接放送するいわゆる「なま放送」の場合に関するものであつて、原著作物を写調したレコードを放送する場合の規定ではない。したがつて、同法条を援用して有線放送の場合には著作権者の許諾を要しないというのは誤りである。なお、同条の五第二項の強制許諾権は、無線放送の公共性にかんがみ放送事業者に与えられたものであるから、公共性の乏しい有線放送の場合には、右の権利は与えられていないものというべきである。

千九百五十一年十一月十七日ローマで採択された「実演芸術家、蓄音機レコード製造者およびラジオ放送機関の保護に関する国際条約草案」第六条には、レコード製造者はその製造にかゝるレコードをラジオ放送のため、または公衆への他の送信方法のため、これを利用するすべての人から公正な対価を受ける権利がある旨規定されている。すなわち、レコードを無断で放送することは、送信方法のいかんを問わず、すべて著作権の侵害となるわけで、これは今や世界の文明諸国において認められた国際法上の確定された原則であつて、我が国においても憲法第九十八条第二項により誠実に遵守されなければならない。

(2)  著作権法第三十条

著作権法第三十条第一項第八号にいわゆる放送とは、無線放送のみを意味し、有線放送は含まない。けだし、右規定は、昭和九年の著作権法改正に際し、日本放送協会(NHK)の放送を対象として新たに挿入されたものであり、当時は民間放送がなく、同協会が唯一の公共的放送機関であつたので、これにレコードの特別使用権を認めたのである。しかも、著作権法第二十二条の五によれば、放送とは「無線電話による放送」を指称することが明白であるのみならず、放送法第二条第一項第一号にも、「放送とは公衆により直接受信されることを目的とする無線通信の送信をいう。」と規定されている。他方有線放送については、別に「有線放送業務の運用の規正に関する法律」が制定されていて、両者は厳に区別されている。したがつて、被申請人の有線放送は、本号の放送には含まれない。

かりに、右第八号の放送に有線放送が含まれるとしても、右規定はレコード利用者と原著作者との関係を規律したものであつて、レコード利用者と第二次的著作者たる写調者(本件では申請人ら)との関係を規律したものでない。すなわち、適法に写調されたレコードについては、原著作者および写調者が重畳的に興業または放送の許諾権を有しているのが原則であるが、原著作者が写調を許諾するにあたつては、写調されたレコードが興業または放送の用に供せられることを予想しているものと認めるべきであるから、原著作者の有する興業または放送の許諾権は写調者に譲渡されたか、あるいは興業または放送についてはあらかじめ放棄されたものと推測される。したがつて、レコード購入者は原著作者との関係ではその許諾を得ないで興業または放送の用に供することができるが、写調者との関係ではその許諾がなければ、興業または放送の用に供することができない。このことは、日本放送協会および社団法人日本民間放送連盟が申請人らに対し毎年巨額のレコード使用料を支払つている事実によつても明白である。

かりに右主張が理由がないとしても、同条第一項第七号ないし第九号の規定は、憲法第二十九条第三項に違反し、同法第九十八条により無効と解すべきである。

かりに右規定が有効であるとしても、レコードを放送に利用する場合にはその出所を明示すべきである。しかるに、被申請人の有線放送には出所の明示が全然ないから、著作権法第三十条第二項により偽作の責任を免れないばかりでなく、同法第十八条の人格権をも侵害する。

以上の主張が理由がないとしても、被申請人のように私利私益のため、他人の損失においてその労作物を無償で使用し、かつ世界には無条約国のレコードや著作権の保護を受けないレコードが沢山あるのに、申請人らの製造、販売するレコードだけを使用することは明らかに権利の濫用である。

(3)  仮処分の必要性について

著作権法第三十六条第一項は、ベルヌ条約のローマ規定第十六条に由来するものであつて、わが民事訴訟の仮差押および仮処分の規定とはその法源を異にするものであるから、仮処分の必要性を主張疎明するに及ばない。

かりに右主張が理由がないとしても、被申請人の有線放送により札幌市内におけるレコードの売上は激減しているのみならず、もし本案判決までこれを放置するときは、被申請人類似の有線放送が全国各地に簇出することが予想され、かくては申請人らのレコード企業は潰滅し、数万の従業員およびその家族がたちまち生活難に陥ること火を見るよりも明らかである。

疎明として、申請人ら代理人は、疎甲第一ないし第二十八号証、検甲第一号証を提出し、証人安藤穰、同正路新一郎、同菊地吉郎の各証言を援用し、疎乙第一、二号証、同第五ないし第八号証、同第十二、十四号証の各成立は認めるが、その余の疎乙号証の成立はすべて不知と述べた。

被申請人代理人は、主文第一項同旨の判決を求め、次のとおり述べた。

一  申請の理由に対する答弁

申請人ら主張の事実中、(一)の事実全部ならびに(二)、(三)の事実のうち、被申請人が申請人らの主張の頃からその主張のような有線放送を行つていること、および申請人ら主張の本案訴訟が当庁に係属していることは認めるが、その余の事実はすべて否認する。

二  本件申請の適否について

著作権法第三十六条第一項は、偽作の疑ある著作物の発売頒布を差し止めもしくはこれを差し押えまたはその興行を差し止めることができる旨規定している、放送の差止については何ら規定していない。したがつて、本件申請は、許されないものである。

三  著作権の侵害について

(一)  有線放送についての許諾権

レコードはもともと音を再生してこれを聴取することを目的として製造販売されるものであるから、レコードの購入者は、これを自由に使用することができる。申請人らが本件レコードにつき著作権を有しても、申請人らは、その使用につき全面的に許諾権を有するものではない。すなわち、著作権法は、第二十二条の五において、無線放送については著作権者に放送許諾権を与え、かつ特定の場合にはその許諾が強調されるとしてこれを制限しているが、これに反し有線放送については何らの規定をも設けていないから、被申請人は、申請人らの許諾を要せずして本件レコードを有線放送に使用することができる。

(二)  出所の明示について

著作権法第三十条第一項第八号によれば、レコードを放送の用に供する場合は偽作とならない旨規定されているので、被申請人の有線放送は、偽作とはならない。なお、同条第二項は単なる処罰規定であつて、いわゆる効力規定でないから、その出所の明示は不必要である。

かりに出所の明示が必要であるとしても、被申請人は、昭和三十一年六月二十一日頃から約三週間はアナウンスにより、その後は番組の印刷物を各加入者に配付し、さらに同三十二年二月六日からはクラシツク音楽については一曲ごとに題名、作曲者、演奏者、製造会社名を、ポピユラー音楽については数曲ごとにまとめてその製造会社名をアナウンスしている。

(三)  以上述べたところにより、被申請人は、何ら申請人らの本件レコードに対する著作権を侵害しているものではない。

四  仮処分の必要性について

被申請人は、より多くの人によい音楽をよく再生して聞かせたい念願から本件有線放送を始めたのであり、その経営規模は、加盟者五十五名、使用レコード百枚、従業員三名(被申請人を含む。)、月収十二、三万円程度のささやかなもので、申請人らに対し何ら実害を与えていないのみならず、むしろ長い目で見れば申請人らのレコードの売上に寄与するところ大である。

また、被申請人の有線放送は特許申請中の特殊の技術によるものであるから、同種の業者が簇出するおそれは全然ない。他方申請人らは、いずれも資本金数億円ないし数十億円の大会社であるから、本案判決確定までの間に申請人らが破産したり、あるいはその従業員が失職するに至るというようなことは絶対にあり得ない。したがつて、本件申請はその必要がないものといわなければならない。

疎明として、被申請人代理人は、疎乙第一ないし第三号証、第四号証の一ないし四十三、第五ないし第十二号証、第十三号証の一、二、第十四号証、検乙第一号証の一、二、同第二号証を提出し、証人加藤正一、同文田政男、同辻勇の各証言および被申請人本人尋問の結果を援用し、疎甲第一ないし第三号証、同第十三および第十四号証の各成立は認めるが、その余の疎甲号証の成立はすべて不知と述べた。

理由

一  申請人らは、本件仮処分申請は著作権法第三十六条第一項にのつとるものである旨主張するが、申請人らの提出に係る全疎明資料によつても、被申請人の本件有線放送が同項にいわゆる偽作の疑ある著作物であると、認めることはできず、したがつて同項が右有線放送の禁止を求める場合にまで適用されるものと解することはできない。しかしながら、同規定は偽作に関する著作権法上の仮処分についての規定であり、しかも右仮処分については性質の許す限り民事訴訟法上の仮処分に関する規定が準用されると解されるのみならず、弁論の全趣旨によれば、申請人らは被申請人の本件有線放送は本件レコードに対する申請人らの著作権を侵害するものであるとして、その侵害防止を目的とし、民事訴訟法第七百六十条にいわゆる仮の地位を定める仮処分を求めていることが明らかであるから、以下同法の仮処分申請として検討する。

二  申請人らがレコードの製造販売を業とするものであり、本件レコードにつきそれぞれその主張のような著作権を有していること、被申請人が昭和三十一年七月頃から肩書住所に北海道ミユージツク・サプライと称する店舗を設け、札幌市内においてとくにレコードを大量に使用する喫茶店、酒場その他一流の商店を対衆に、右レコードおよび別紙目録(十)記載の機器を使用して、その主張のような有線放送をしていることは、当事者間に争いがない。

申請人らは、著作権の本質は複製権にあるところ、レコードの有線放送はその複製ないし公表の一方法として、法律の規定をまつまでもなく著作権の侵害になると主張するので、この点について考える。

三  著作権とは文書、演述その他の文芸、学術もしくは美術の範囲に属する著作物を直接かつ排他的に利用することを内容とする物権類似の特殊の権利であり、その利用は原則として複製行為によつて行われる。

すなわち、複製は利用の手段であり、両者は表裏一体の関係にあるところで、ここに複製とは、その方法が有形的であると無形的であるとを問わず、いやしくも人をして原著作物を感知せしめるような状態におく一切の場合をいうのであつて、その手段方法は必ずしも著作権法に明文をもつて規定されているものに限定されないと解すべきである。けだし著作権法の目的は、まず人の創造的精神活動の所産を保護するにあるが、他方近代科学の発達にともない文化財の複製、利用の技術はますます雑製多様となり、著作権の内容もますます増大して行く傾向にあるので、同法の明文の規定のみに固執するときは、文化社会の実情にそぐわないばかりでなく、かえつてその権利の侵害を助長し、ひいては文化の発展を阻害するおそれがあるからである。したがつて、著作物利用の方法が新たに発見されたときは、これに応じて著作権の内容もまた拡大充実し著作権者はその新たな方法による複製、利用につき許諾の権利を有するに至るものというべく、第三者がその許諾を得ないで著作物を複製、利用するときは、著作権の侵害になるものと解するのが相当である。

かように解すると、レコードの有線放送がレコードの音声その他音響を有線電気通信設備によつて送信する機械的、技術的操作である点にかんがみ、レコードの複製、利用の一方法として有線放送を利用した場合についても、著作権法の適用があるものといわなければならない。

本件についてこれをみると、レコードは原則として購入者をして自由にこれをその私的利用に供させることを前提として販売されるものであるが、右販売行為はこれに対する著作権もしくはその部分権の譲渡とはいえないけれども、購入者が各自の家庭でレコードをかけ、あるいは映画館、商店等でレコードの音声その他音響を再生して放送するような場合には、レコードの利用に関する著作権者の許諾権はあらかじめ放棄されているものと解される。しかしながら、被申請人が営利の目的をもつて有線放送を行つていることは弁論の全趣旨により明らかであるから、かようにレコードを大量に使用する接客業者数十軒に対し、毎日長時間にわたりその営業にふさわしいレコード音楽を有線放送するような場合には、右許諾権の放棄があつたものとは到底考えられない。しかして、被申請人が右有線放送につき申請人らの許諾を得ていないことは同人の明らかに争わないところであるから、被申請人の有線放送は申請人らの著作権を一応侵害するものであるといわざるを得ない。

四  被申請人は、著作権法第三十条第一項第八号のいわゆる放送には有線放送も含まれるので、被申請人の本件有線放送は偽作とはならない旨主張する。

放送の自由利用に関する同法第三十条第一項第八号の規定は、同第二十二条の五第一項を受け、同条の五第二項とともにこれを制限する意味で設けられたものであること、同第二十二条の五はもとベルヌ条約のローマ規定第十一条の二に由来するものであるところ、同条の二は著作権者の権利と国家公共の利益との妥協を図るため新たに挿入されたもので同条にいわゆる無線放送とは、無線電信および電話による放送のみを意味し、有線の電信もしくは、電話による放送(すなわち有線放送)または音もしくは形像の移送に使用せられるその他一切の類似の方法による放送(すなわちテレビジヨン放送)は含まないものとされたこと、さらにその後に制定された放送法および「有線放送業務の運用の規正に関する法律」等は、いずれも無線放送と有線放送を区別し、無線放送の場合には単に放送と呼んで使い分けしていることなどを考え合わせると、右第三十条第一項第八号の放送は無線放送のみを意味し、有線放送を含まないことは明らかである。

なお、著作権法が第三十条のような制限規定を設けたのは、著作権は何人に対してもその権利内容を主張しうる絶対的な権利ではあるが、著作権者の権利を余りにも強調し保護すると、文化の普及、発展を阻止するおそれもあるので、著作権法は特定の場合に限りその著作物を一般に解放し、あるいは一定の条件の下に自由利用を認めて両者の調整をはかり、もつて文化の普及発展を助長しようとしたためである。したがつて著作権法における例外規定であるところの第三十条の規定は、文化の発展という国家公共の見地に立つて厳格に解釈すべきで、みだりに拡張解釈すべきでないというべきところ、被申請人の有線放送は、前述のように特定の接客業者のみを相手に行われている営利行為であつて、その公共性は極めて乏しいので、公共性の強い無線放送(民間放送を含む。)におけると同様の自由利用を認めることはできない。

したがつて、いずれの点からしても、被申請人の右主張は採用することができない。

五  そこで、本仮処分の必要性があるかどうかについて検討することとする。

証人正路新一郎の証言により真正に成立したと認められる疎甲第十九号証、同証人の証言、証人安藤穰および同菊地吉郎の各証言によれば、被申請人が本件有線放送を開始して以来、札幌市内のレコード販売業者の売上高は毎月約十数万円の減となり、また従前の売掛金の回収が困難となつている事実が疎明され、したがつて申請人らもある程度の損害を受けていることが推認される。また、被申請人が将来も本件有線放送を経続する意思を有し、かつ加入者も漸次増加していることは、被申請人の認めるところである。

したがつて、申請人らがその損害を防止するために本件仮処分申請に及んだことも一応もつともなことではあるが、しかしながら、他方、成立に争いのない疎乙第一および第十二号証、被申請人本人尋問の結果によれば、被申請人の有線放送は札幌市内繁華街の商店をその主な対象とするものであつて、その経営の規模も月収約十三万円程度のものにすぎないこと、また被申請人は申請人らに対し本件仮処分申請当時から被申請人の経営にふさわしいレコード使用料の協定方を再度申し入れたが、申請人らは何らこれに対し応答することなく本件仮処分手続および本案訴訟を進めていることが認められる。

かようにみてくると、申請人ら提出の前記疎明をもつてしては、申請人らが本案判決を待たずいま直ちに被申請人の本件有線放送を禁止するのでなければ回復することのできない損害を受ける虞があることを認めるに足りず、その他申請人らの提出に係る全疎明資料によつてもこれを認めることはできない。したがつて、本件仮処分の必要性は、結局その疎明がないことに帰し、また疎明にかえて保証を立てさせることも相当ではない。

六  よつて本件仮処分申請は理由がないから却下することとし、申請費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおりと判決する。

(裁判官 吉田良正 四ツ谷巖 徳松巖)

目録(一)

日本コロンビア株式会社

コロンビアM・G・Mレコード番号順総目録

一九五七年度版三百五十二帖

目録(二)

日本ビクター株式会社

ビクターレコード、ビクター番号順総目録

一九五七年度版二百二十四帖

目録(三)

東京芝浦電気株式会社

エンジエルレコード番号順目録

一九五七年度版百三十帖

キヤビトルレコード番号順目録

一九五七年版六十八帖

目録(四)

日本グラモフオン株式会社

一九五七年度版番号別目録百四十一帖

目録(五)

日本ウエストミンスター株式会社

ウエストミンスター・レコード総目録

一九五七年度版六十七帖

ウエストミンスター・レコード一月新譜ガイド十八帖

ウエストミンスター・レコード二月新譜ガイド十帖

ウエストミンスター・レコード三月新譜ガイド十帖

目録(六)

日蓄工業株式会社

エピツクレコード一九五七年三月新譜八帖

目録(七)

テイチク株式会社

テイチク・デツカ番号順総目録

昭和三十二年版百九十二帖

目録(八)

新世界レコード株式会社

一九五七年三月新譜

新世界レコード、カタログ十帖

目録(九)

キングレコード株式会社

番号順総目録

昭和三十二年版百八十二帖

目録(十)

札幌市北一条西三丁目三番地

北海道ミユージツク・サプライこと

西村一男 方所在

一、スリースピード・レコードプレーヤ 三台

一、再生アンプリフアイヤ(増幅器)  三台

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